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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
なるであろう、と、その時も辰雄はそう云ったくらいで、それやこれやがあるものだから、十三回忌にはわざと大阪の地を避けたのであるらしかった。親戚の老人の誰彼などは辰雄の遣り方を批難して、親の法事に東京から出て来るぐらいが何であろうとか、本家は近頃えらい締まり屋になりなさったそうだが、お金が出ると云ったって外のことと違うではないかとか、いろいろなことを云う者があり、鶴子が間に挟まって困ったのであったが、十七回忌には大阪へ行って埋め合せをするからと云うのが、その折の辰雄の言訳であった。で、幸子はそう云う前例があるところから、今年の母の法要はどうするのであろうか、又東京で済ましてしまわれては親類の口がうるさいよりも、自分たちが治まらないような気がしていたのであった。
義兄の辰雄は母と云う人を全然知らないのであるから、何の感じも湧く筈はないが、幸子の母を思慕する情には、父に対するのとは又違った、一種特別なものがあった。大正十四年の十二月に五十四歳で脳溢血で斃れた父も短命と云えないことはないが、母は大正六年に三十七歳の若さで亡くなったのであった、―――と、そう思って見て幸子は、自分が今年その母の歳になっているのだと心づき、本家の姉がもうあの時の母よりも二つ上であることに考え及んだが、彼女の記憶の中にある母その人は、現在