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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页
「宜いとも。別口の嘘を二つつくよりも、一つ嘘を二度つく方が罪が軽い」
と寛一君は理窟をつけた。
新太郎君は翌日一日松浦さんの来訪を待ち暮したが、何の音沙汰もなかった。次の日の昼頃、
「松浦家から参りました」
と店先へ現れたものがあった。新太郎君は飛び立って取次に出たが、それは使の者が松浦家から全快祝いの鳥の子餅を持って来たのであった。
「何だ。馬鹿々々しい」
と新太郎君は失望して机へ戻った。
「前触れだよ」
と寛一君が囁いた。
その晩松浦さんが羽織袴に改まってやって来た。新太郎君は最初の間、接待役を勤めていたが、挨拶が済んで世間話に花が咲き始めた頃、父親の目まぜと共に、
「新太郎や、一寸」
と母親に呼び出されてしまって、肝心の用談は無論聴くことが出来なかった。尤も自分でも急に立つのは気が映して、進退に迷っていたところだった。松浦さんは二時間近くも話し込んで引き取った。それから父親と母親が茶の間で談合を始めた。吉か? 凶か? 新太郎君は気が気でない。書斎へ上ったり店へ下りたりして、いつもの癖で無暗に髪の毛を掴んだ。
「新太郎や」
と、やがて、母親は梯子段の下まで来て、二階を目がけて呼んだ。