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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页
と新太郎君は丁寧にお辞儀をした。
「俺よりも宮地さんだよ。会ったら能くお礼を申上げなさい」
「はあ」
「宮地さんがついていますから、もう大抵大丈夫でございましょうね?」
と母親は父親の共鳴を求めるように言った。
「いや、イヨ/\纒まるまでは五分々々と思っている方が宜いよ。取引でも縁談でも同じことだ」
「でも此年になってから宮地さんが手がけて纒まらなかったのは一つもないそうでございますよ。此年は特別に当り年だと仰有っていましたわ」
「あれは些っと法螺もあるよ。御苦労な男だと思っていたが、斯うなると有難い。どれ、一つ報告に行って来なけりゃならない」
と父親は立ち上った。宮地さんは出雲町に住んでいる。仲人が道楽だ。同業者の息子息女は大抵この人の肝煎で縁を結ぶ。出雲の神さまを住居の出雲町に引っかけて、宮地出雲守という綽名がついている。
父親を送り出した時、店の電話が鳴った。新太郎君は直ぐに受話器を取り上げたら、それは秀子さんからだった。好いことは重なる。一昨夜の挨拶があった後、
「西川さん、その時のお約束ね。今度の日曜は如何?」
「迚も駄目です」
と新太郎君は慌てゝ答えた。