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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页
区役所へ引渡されて仮埋葬なんてことになっちゃ溜まりませんから、この頃は帽子にも紙入にも名刺を入れて歩きます」
「まあ、御用心のお宜しいこと」
「これで逝く友人がこの頃殊に多いんです」
と兄さんがつい又話し込んだ。すると清次郎氏は又やった。
「べら棒め。一生婆に苛められたんだ。この上ヨイ/\になって溜まるものか」
と今度は一言一句紛れがなかった。
「おい/\、清次郎」
「何です?」
「今は確かに言ったぞ」
「いゝや。うつら/\考えごとをしていたんです」
「変だね、何うも。性がない」
「私、もう彼方へ参ります」
と貞子夫人は決然として立ち上った。
「まあ/\、貞子さん、お待ちなさい。病人の言うことですよ」
「病人にしても余りじゃございませんか?」
「御道理です」
「私は夜の目も落ち/\寝ずに看病しているんでございますよ。婆とは何事でしょう?」
「まあ/\、お下に」
と兄さんは持て余した。
「何うしたものでございましょうね」
と貞子夫人は漸く納得して坐った。同時に看護婦は気を利かして立って行った。
「こゝの病気です。頭がいけないんです」
と兄さんは我と我が禿頭を叩いて見せた。
「私、一生懸命になっていますのに、こんなに僻むと思うと情なくなりますわ」