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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页
苟もの始まりは七月、いや、八月、いや、矢張り七月末でした。西川君のお父さんが転地療養ながら逗子へお出になって……」
と友三郎さんは一生懸命になって説き起した。操さんも側から加勢する。既に昼間荒ごなしがしてあったから、一々能く耳に入ったらしく、
「お前達が進んでいるほどあって申分ないようね。平民ってことの外は」
と母親は大体合点が行って、最初の権幕にも似ず、相手が士族でないのを遺憾とするようだった。商家が必ずしも気に入らないのではない。平民だからいけないのである。
「お母さん」
とこの時操さんがニコ/\した。
「何ですか?」
「武家というものは今日もうございませんから、お母さんの理想から申しますと、秀子や芳子は軍人へお嫁にやるより外ありませんわね」
「いゝえ、然うは参りませんよ。軍人にも平民がありますから」
「まあ、然うでございましたわね」
「平民は何でもいけません」
と母親はこの点金城鉄壁だ。
「けれどもお母さん、紙屑買をしている士族と高等官をしている平民があると致しましたら、何方へ秀子をお上げになりますか?」
「さあ。何方へも上げられませんわ」
「けれども世間にこの二人しかないと仮定した場合です」