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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页
と父親が改まっていた。
「やあ、新太郎さん、お待たせ申しました」
と宮地さんが会釈した。新太郎君は一礼して母親の側に坐った。
「斯うなると代々の土百姓は能がありませんな」
と父親が何か述懐した。
「奥さんのお手柄です」
「お母さん、何ですか?」
と新太郎君は合点が行かなかった。
「矢っ張り士族平民が喧しいんだそうですが、考えて見ると此方は私のお母さんのお父さんが御家人だったから、満更素町人でもないということになったのさ」
と母親が説明した。
「妙なものが――と申しては失礼ですが、思いもかけないものが役に立ちますな」
「私さえ考えたこともないのに能く覚えていて下さいましたのね」
「ヒョッと思い出しましたよ。尤も友三郎さんに責められたのです。何とかしてお母さんの顔を立てゝ貰いたいと一生懸命ですよ。先方でも」
「お蔭様でございます」
「後継が今もおありですか? お母さんのお里の」
「はあ、本所でお風呂屋をしていますが、引き合いに出すのも却って変なものじゃございますまいか?」
「いや、唯確めてさえ置けば私も安心して口が利けます。禄高は何石でしたか?」
「さあ、存じませんね。御家人ですから。