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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页
然ういう狡い奴に制裁を加えるのは当り前のことです」
と老人は又々釣魚の効能を述べ始めた。
「大変な議論です。おやッ!」
と驚いて竿を引いた時、新太郎君は可なり大きなのを釣り上げた。
「おや/\」
「何でしょう?」
「黒鯛々々。これはお手柄だ」
と老人は自分のことのように喜んだ。名ある魚は滅多に磯から釣れるものでない。この黒鯛は矢張り神経衰弱で転地をしていたものか、或は何か特別の天意があった一疋かも知れない。
兎に角、これが病みつきで、新太郎君は釣魚が大好きになった。毎日老人と二人づれで出て行く。もう黒鯛はかゝらなかったが、磯魚が結構釣れた。天然療法が効を奏して、心持あった神経衰弱も拭ったように取れた。その間に寛一君が両三度遊びに来て、海水浴の季節が近づいた。新太郎君の許された一ヵ月の静養期間が切れた頃、もう帰って来そうなものと待っていた寛一君は或日次の手紙を受取った。
寛一君。
大変なものが釣れた。黒鯛どころの騒ぎじゃない。今日昼から釣魚に出掛けようとすると松浦さんの姉妹にバッタリ行き合った。僕を覚えていてくれたのは有難い。
「おや/\」
「あらまあ」
といったような次第さ。