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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

然るに今度は将来のお婿さんとして出頭する。それも一日ゆっくりとの註文だ。

「おい、君、松浦さんだろう?」

と寛一君に図星を指された時、

「ヘヽヽヽ」

と相好を崩したのも無理はない。

「何うしたんだい?」

「遊びに来いと言うのさ」

「トン/\拍子だね」

「全くお蔭様だよ」

「僕は矢っ張り洋行させて貰いたいな」

「それは無論骨を折る。成功謝礼だ」

「いや、これから半年は見るに見兼ねるだろうと思うからさ」

「何あに、大丈夫だ。僕だって理性がある」

「怪しいものさ」

「もう釣れている魚だぜ。然う/\御機嫌は取らないよ」

「何うだかね」

と寛一君は手を焼いているから容易に信用しない。

日曜の朝、新太郎君は新調のモーニングに身を固めた。この前の羽織袴に対して変化を試みたのである。秀子さんには無論のこと、初対面の両親に好い印象を与えたい。洋服屋の註文取と思われないように特に念を入れた。お土産は例によって不二屋のチョコレートだった。

「新太郎や、チョコレートはもう今度でお仕舞いにしろよ。余り甘いと思われるぜ」

とむずかしい父親が冗談を言ったくらい、この縁談はチョコレートで首尾一貫している。