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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页
「はあ」
「しかし伯父さんのお謡曲は素人放れがしているそうでございますよ」
と友三郎さんが念の為披露に及んだ。打ち合わせて置かなかったから、新太郎君が長唄か何かの積りでいると大事だ。
「好いお婿さんだよ」
とお父さまは間もなく少し疲れて例の独ごとを言い始めた。
「それでは彼方で御ゆっくり」
とお母さまが気を利かしたので、新太郎君は友三郎さん諸共引き下った。
洋間には秀子さん初め芳子さんと俊男君が待っていた。
「やあ、俊男さん」
と新太郎君は馬として利用する関係上この少年には特に馴染んでいた。友三郎さんと操さんが接待係を勤める。顔ぶれがそのまゝだから、気分は逗子の夏に戻る。
「西川さん、原田さんはお変りございませんの?」
と秀子さんが訊いた。
「あゝ、皆さんに宜しくと申しました。元気好く働いています」
「原田さんは近々海外視察に出かけるんですとさ」
と友三郎さんが消息を伝えた。
「まあ。あなたは? 西川さん」
「私は迚も」
と新太郎君は覚えず力強く否定して、松浦さん夫婦の手前恥かしかった。
「父が出かけます。原田はお供で、僕は留守番です」
「それじゃ御主人ね? 当分」
「はあ」