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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

但し裏と表を使い分ける。手品の種を直ぐには明かさない。

「寛一さん、君も今度は卒業だが、何うする積りだね?」

とその折伯父さんが訊いた。

「未だ方針が定っていません。定めたところでこの頃のような就職難じゃ何うしようもありません」

「然う諦めたものでもあるまい。表門から入れなければ裏門からってこともある。会社によっては俺が頼んでやっても宜い」

「有難うございますが、迚も駄目です。私は卒業成績が好くないに定っています」

と寛一君は悉皆諦めていた。

「成績は然う関係しないよ。現に俺の知っている重役は一番や二番を集めたら融通の利かないのばかり揃って困ったと言っている。真正に使えるのは勉強しないで十番どころを占めている実力家だそうだよ。君は新太郎と好い相棒で決して無理な勉強をしない方だから、註文に篏っているぜ」

「恐れ入りますな。しかし三十番以下と来ています」

「何あに、下の方にいて落第をしないのは融通の利く証拠さ。三十番なら十番の三倍方使える勘定になる」

と伯父さんはいつになく冗談を言って話し込んだ末、

「寛一さん、商売と学校は全っきり違うよ。俺のような横文字も碌々に読めない者でも組合の頭取が相応勤まって行く。