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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

さて、新太郎君と寛一君はこの松浦さんの一行と共に海水浴場へ出掛けたのである。折から好晴で誂え向きだった。未だ季節が始まったばかりだけれど、日曜だから最早相応人出があった。

「お蔭さまで俊男君は上達しましたよ」

と松浦さんが寛一君に去年のお礼を述べた。

「あなたも今年は本気になって練習なすっちゃ何うです?」

と新太郎君が勧めた。

「私は駄目です。妹達をお仕込み下さい」

と松浦さんは海水着丈け仰々しいが、滅多に入らない。砂の上に立って婦人連中の心配ばかりしている。間もなく新太郎君は神経衰弱を忘れ、寛一君は店を忘れて手練の程を示し始めた。

昼からは日帰りの連中が入り込んで来て益※(二の字点、1-2-22)賑った。新太郎君は秀子さんの手を取って補導に努めた。婦人を深いところへ案内するほど喧しいことはない。今にも殺されるような悲鳴を揚げて、懸命にく。

「君、君」

と折から芳子さんを引受けていた寛一君が岸に立っている見物の姿に気がついた。

「駄目ですよ、そんなに怖がっちゃ」

「でも厭よ、こんな深いところは、あら/\/\」

「大丈夫ですよ」

と新太郎君は耳に入らない。

「新太郎君、大変だ」