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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

寛一君も面喰った。伯母さんは兎に角、伯父さんが煙ったい。一つ穴の貉と見破られたような心持がする。二人は適当な言葉が見つからずに、唯お辞儀をするばかりだった。

「こんなに丈夫になっているとは思わなかったよ。結構々々」

と親身の父だ。皮肉でも小言でもないのだが、新太郎君にはビシ/\と利いた。

「随分呼んだのよ。些っとも聞えないんだもの」

と母親は秀子さんの方をチラリと見た。

「はあ、つい、その」

と新太郎君も父親と一緒の母親には策の施しようがない。悉皆見られてしまったと肚の中で思っていた。

「宿へ御案内しよう」

と寛一君が相談をかけた。

「うむ」

と新太郎君は頷いて、

「さあ、参りましょう」

と先に立った。

「盛んなものだなあ!」

「これだから丈夫になるんですよ」

と両親は波間に嬉遊する人魚の大群を眺め乍ら歩き出した。

「伯父さん、好いお天気ですなあ」

と寛一君が間もなく言った。余り黙っていては具合が悪いと思ったのだが、今まで泳いでいて殊更に「好いお天気」もないものだと気がつくと稍失敗の感じがあった。しかし伯父さんは、

「好い景色だ」

と浪の音のお蔭で聞き違えてくれた。