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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页
「実は医者も神経衰弱といえばまあ神経衰弱でしょうなあと頗る不平のようだったよ」
「それ見ろ。この親不孝もの!」
「家へ密告丈けはするなよ」
と新太郎君は事実を告白した。それから夕方まで喋って、
「晩飯を附き合い給え」
と友人を神田辺へ引っ張って行った。銀座は親父の目が光っている。
その次の日に逗子の宿から返事が来た。見晴らしの好い部屋が明いているとあった。未だ海水浴には少時間があるから、今の中なら択り取りらしい。
「お母さん、長々お世話になりましたが、明日出掛けます」
と新太郎君はその晩荷物を纒め始めた。
「変なことを言うのね、お前は」
「一寸お礼を申上げたんですよ」
「お前に改まってお礼なんか言われると、私は気にしますよ」
「普段が普段ですからね」
「然うさ。いつにもないことだからさ」
と言っても、母親は息子の殊勝らしい態度が多少嬉しかった。
「荷物がナカ/\ありますよ」
「沢山本を持って行くのね? 皆小説?」
「えゝ。退屈するでしょうから」
「明日何時に立つの?」
「朝の八時の汽車で行こうかと思っていますから、七時を打つのを合図に……」
と新太郎君は態と言い淀んだ。
「合図に何ですの?」