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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页
「寛一や、早くお湯にお入り」
「…………」
「寛一や、その電報はね……」
「お母さん、無暗に開けて見ちゃ困りますよ」
と寛一君は白い目をした。新太郎君のように独り息子ではないが、矢張り長男だから、父親以外に頭の押え手がない。
「でも、お前、用向次第で店まで持たせてやらなけりゃなるまいと思ったんだよ」
「…………」
「チョコレートぐらいで電報を打ったりして、これだから、私、姉さんのところは駄目だと始終言っているんですわ」
と母親は自分の家の躾の厳しさを誇るようだった。しかし寛一君はそんなことに頓着なく、
「厭になっちまうなあ」
と呟いた。昨夜といい今朝といい、新太郎君の為には伯父伯母の間に板挾みになってクサ/\している。
「何うして?」
「僕はもう店が勤まらないかも知れません」
「何うしてさ?」
「新太郎君のお蔭で伯母さんに叱られたり伯父さんに具合が悪かったり、些っとも面白くないんですもの」
「姉さんがお前を叱ったの? まあ! 何と言って叱ったの? 話して御覧なさい」
と勝気の母親は早速気色ばんだ。
「叱ったって次第でもありませんが、新太郎君が余りいつまでも帰って来ないものだから、伯父さんの御機嫌が悪いんです」