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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

「私、叱ったんじゃありませんよ。厭味を言う子だねえ」

「…………」

「何をそんなに考えているの?」

「どっこいしょ。天候恢復か。あゝ/\」

「逗子は昨日そんなにお天気が悪かったの? 此方は一日何ともなかったのに」

「いや、これは空のお天気じゃないんです」

「それじゃ何のこと?」

「ヘッヘヽヽヽ」

「何さ?」

「ハッハヽヽヽ」

「何ですね。笑ってばかりいて」

「おい/\、寛一」

とこの時茶の間から父親が呼んだ。

「はい」

「話は御飯の時にして早くお湯にお入り」

「はい/\」

「お父さんは先刻から待っていらっしゃるのよ」

と母親も急き立てた。

夕飯には及ぶ限り家中が揃うことになっている。寛一君が湯から上って食卓についた時、その赤い顔が皆の注目を惹いた。

「焼けたわねえ」

と妹が感心した。それから逗子の話が出るのは当然のことだったが、寛一君は新太郎君の問題に触れるのが厭だった。新太郎君のことを訊かれると、勢い自分の立場を説明しなければならない。それで成る可く沈黙を守っていたが、母親は誤解して、

「あなた、寛一は店が厭になって、こんなに悄げているんでございますよ」

と突如一番困る問題を持ち出した。