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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

「あゝ、秀子さん」

「知らない!」

「昨日のこと僕実に申訳ありません」

「…………」

「これから気をつけますから、何うぞ堪忍して下さい。ねえ、秀子さん」

「えゝ」

「有難うございます」

「私、怖い顔でしょう?」

「えゝ、いゝえ」

「憤っているといつもこんなよ。損だから堪忍してやるわ。オホヽヽヽ」

「有難うございます。もう一緒に游いで下さる?」

「えゝ」

「有難うございます」

と乞食が一円紙幣を貰ったように有難うの百万遍だ。何方が教えるのだか分らない。そんなにしてまで師範を勤めたがるのは水府流の名折れだなんて言うなよ。聊か不見識のようだが、弱味があるから仕方がない。貰ってしまえば然う/\あやまらない積りだ。こゝ少時の辛抱さ。僕は死力を尽して御機嫌を取る。ついてはこの際チョコレートが早く着くと大変に都合が好いんだ。首を長くして待っている。昨日の今日だろう。母からと言って献上する。

寛一君、察してくれ給え。斯うなると月一杯では帰れない。実は八月一杯と吹っかけたいんだが、せめて中旬までガ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ナーの御機嫌を繋いで貰えまいか? 昨日の権幕では覚束ない限りだが、マザーを説いてくれ給え。