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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

「改まってお礼を言うこともないわ。親子の間ですもの」

「親子の間に月給制度があるんですね?」

「七八月が心配になるなら、私からお父さんに話して何うにでもして上げますよ」

「然うして戴かないと励みがありません」

「機嫌好く行ってお出なさい。変なことばかり言われると私も気になりますよ。お金は三月分あれば沢山でしょう?」

「大抵間に合う積りですが、お母さん、思召はございませんか?」

「まあ、厭な子だねえ。先刻からお別れだの何だのって妙に心細がらせると思っていたら、私からも取る積りだったの?」

とお母さんは合点が行くと共に安心して、早速三十円出してくれた。

翌朝新太郎君は寛一君と清吉に送られて新橋から立った。その折寛一君は、

「少し手廻しが早過ぎるようだぜ」

と言って笑った。

「何だい?」

「二度言うと風邪を引く」

「何だよ。もう汽車が出る」

「斯う乗り込んでしまえば憤っても構わない」

「足許を見るなよ」

「君は去年の松浦さんが忘れられないんだろう?」

「馬鹿を言え」

「今から行って待っているんだろう?」

「馬鹿あ言え。こん畜生!」

「土曜の晩に行くよ。さよなら」

「さよなら。待っている。