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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

「真正に君、一体何うする料簡だ?」

「おれは自分で自分が分らない」

「仕様がないなあ」

と寛一君は長歎息するばかりだった。

丁度その日のその刻限に新太郎君の家ではお父さんが発病した。外から帰って来ると間もなく眩暈がして二三回吐いた。かゝりつけの丹波さんが直ぐに駈けつけて、暑気中りと診断した。

「鬼の霍乱でしょう」

と翌日店員達は当分寛げる積りだった。しかし西川さんは我慢の強い人だから、二日寝たきりでもう帳場へ顔を出した。

「如何でございますか?」

「有難う。もう宜しい」

と言って仕事をしていたが、実は頭が重かった。病気をしたことのない人は兎角無理をする。これが悪かったと見えて、西川さんは夜寝られなくなった。妙に目が冴えて店のことが気にかゝる。新太郎君の将来が案じられる。自分に万一のことがあったら何うするのだろうと思う。輾転反側、明方までまんじりともしない。そこで或晩丹波さんへ行って具に容態を訴えると、

「過労ですよ。少し神経衰弱が来ています」

とあった。

「しかしあれは若いものゝかゝる病気の筈でしたがな」

と西川さんは少々不平のようだった。

「お若い証拠ですよ。