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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

突然行くと吃驚する」

「それじゃ何うでも逗子でございますか? もっと気の利いたところがいくらもありますのにね」

と細君は今はもう仕方なかった。

晦日の夕刻逗子の駅に父親とお供の寛一君を迎えた新太郎君は、

「お父さん、何んな御容態です?」

と長い顔をしていた。

「お前と同じだ。寝られない」

と答えて、父親は直ぐ俥に乗った。寛一君は荷物を手渡しながら、

「ガ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ナーは君の所為だぞ」

「うん」

「覚悟は好いか?」

「うん」

と消息を交換した。尤もその前日に長文の電報を寄越していた。新太郎君はそれと母親の手紙によってイヨ/\遁れられない運命と諦めたから、宿に着くと早々、

「お父さん、私はお父さんの看病を致しましょうか? それとも店へ帰って働きましょうか?」

と屑い覚悟の程を示した。

「ふうん」

と父親は意外に感じた。尻尾を捲いて逃げ出す一途と思っていたところへ、踏み止まって看病しましょうかと来たから気に入った。

「お父さん、長々我儘ばかりして申訳ありません」

「よし。それじゃ帰って貰おう。お前が真面目になれば俺は寝られる」

「はあ」

「万事栗林さんの指図に従って店の仕事に精を出しなさい」