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じゆうじん

自由人

豊島 与志雄

「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页

青空文庫

社長佐竹次郎の好みで、春秋の彼岸の期間に、年二回なされるのである。

今年の春には、料亭閉鎖と人員との関係上、上野の精養軒でお茶の会ということになった。茶菓は精養軒で出して貰い、折詰の料理と豊富な酒類はよそから搬入された。印刷や執筆の方面からは、目ぼしい人々は出席せず、ただ雑然たる集合に過ぎなかった。――それが済んで、夕刻、社内の主な人々を中心に、謂わば社長の側近の人々だけ、十五名ばかり、不忍池に臨んだ焼け残りの料理屋で、二次会をやった。

その中に、田島章吾がはいっていた。彼が天元社への大出資者であることを知ってる者は、社長以外には二三人に過ぎないし、それも田島自身の希望で秘密にされていた。それ故、はたから見れば、彼の存在は聊か場違いの感じがあって、知人も少なく、ただ社長のそばに笑顔で控えてるだけだった。ところが、二次会の料理屋では、顔が、利いてるらしいし、社長をさしおいて何かと指図がましく振舞い、女中風には装ってるがそれと分る芸妓をも四人ほど侍らした。一座が少し白けかけると、彼は隠し芸を提案した。――東京出身者も地方出身者もそれぞれ、郷土の民謡を一つ唄うことにしたい。