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じゆうじん
自由人
豊島 与志雄
「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页
」
北村は笑って、ゆっくり歩きだした。千重子の方でそれに歩調を合わせた。
「ところで、この頃なまけて、休んでばかりいるじゃないか。忙しいのかい。」
「夏休みよ。」
「ああ、そうか。」
北村はさっぱりしたものだったが、千重子の顔には、さっと或る閃めきが走った。――彼女の顔は、額が広く下廻りに鷄卵形をなし、小さな※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)が少しくしゃくれ、日本人としては異常に色が白く、一面に産毛が密生してるような感じで、長い睫毛の奥の黒目が冴えて見えた。その白い皮膚と黒い瞳に、強い感情の動きにつれて、一種の閃めきがさっと走るのである。
「その夏休みが、早く済めばいいと、思ってるんだけれど……。」
北村は足をとめて、千重子の顔を見た。
「ははあ、分ったよ。菅原君が早く帰ってくればいいというんだろう。」
「知らない。意地わるね。」
「それだから、私はインテリお嬢さんは嫌いだ。よく分ってることを知らないと言う。嬉しいことを、意地わると言う。もっと素直になりなさい。」
「ほんとは、菅原さんが早く帰っていらっしゃればいいと思うの。だけど、なんだか、それが怖いような気もするの。