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じゆうじん

自由人

豊島 与志雄

「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页

青空文庫

」

菅原は返事をせずに、考えこんだ。

「違うのか。」

「いや、まあそんなものだ。」

「どこで寝るのか。」

「うちで。北村さんとこさ。」

「あすこはだめだろう。食事に困る。ここで寝ていかないか。君の室に、朝も晩も食事を運ばせるよ。」

「さあ、も少し考えてからにしよう。」

「も少し飲んでからにしたまい。きっとつぶれるから。」

周はグラスを挙げた。そして祝杯だと言った。

「近いうちに、君にも戻ってきて貰うよ。はじめからの約束だ。家が一軒見当ったよ。」

近所に、手頃な売家があったから、それを買うことにした、と周は話した。もう契約をすまして、登記をするばかりになっている。菅原に適当な室もある。第一に、漢方医学の薬局をそこへ公然と設けるのが、何よりの楽しみだ。日本の法律ほど面倒な煩雑なものはないが、彼は幸にも日本の医学専門学校の卒業生だから、薬局ぐらいは開くことが出来るだろう。固より名目だけのことで、顧客はない方がよい。自由気儘な研究が目的だ。モルモットを飼って、動物実験もしてみたい。ペニシリンだって、青黴の一種から発見されたのだ。どんな草根木から、結核菌に対する的確な薬剤が発見されるか、分ったものではない……。