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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「いや、たしかにそのつもりだよ。僕をサンザ痛い目にあわせておいて、痛いですかなんて笑っているんだもの」

「ハッハハハハ」

「きみも笑うね?」

「失敬しました」

「今日は僕の方から柳田先生を痛い目にあわせてやる」

「どうなるんですか?」

「見ていたまえ」

「らんぼうなすっちゃ困りますよ」

「なあに、口でやる。ハッハハハハ」

と照彦様も笑いだした。

柳田歯科医院に着いたら、患者が数名控え室に待っていた。しかし照彦様は特別だから、おくさんの案内で客間から治療室へ通って、すぐに椅子にかけた。

「若様、今日は神経をとりますから、すこしお痛いですよ」

と柳田さんがあらかじめことわった。

「いやだな」

「しかしちょっとです。のみに食われたぐらいのものです」

「のみは痛いですか?」

「オホホホ。若様はのみなんかご存じありませんわ」

とおくさんがはたから説明した。

「これは大しくじりです。蚊に刺されたぐらいのものでしょう」

「嘘です。蚊はかゆいばかりです」

「それでは蜂にさされたぐらい」

「これはたまらない」

と照彦様は立ち上がった。蜂ではこりている。

「冗談ですよ。ほんとうは種痘ぐらいのものです」