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ちのもじ
血の文字
黒岩 涙香
「綾にしき」1892(明治25)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,021 字 · 87 页
事が出来ようか」と問う、目科は「出来るとも僕が此事件の詮鑿を頼まれて居るでは無いか仮令い夜の夜半でも必要と認れば其罪人に逢い問糺す事を許されて居る」と云い余を入口に待せ置き内に入りて二言三言、何事をか残員と問答せし末、出来りて再び余を従えつ又奥深く進み行き、裏庭とも思わるゝ所に出で、を横切りて長き石廊に登り行詰る所に至れば厳めしき鉄門あり、番人に差図して之を開かせ其内に踏み入るに是が牢屋の入口なる可く左右に広き室ありて室には幾人の巡査集れるを見る、室と室との間に最険しき階段あり之を登れば廊下にして廊下の両側に列なれる密室は悉く是れ囚舎なるべく其戸に一々逞ましき錠を卸せり、廊下の入口に立てる一人、是が世に云う牢番ならんか、兼て小説などにて読みたる剛らしき人とは違い存外に気も軽げなれど役目が役目だけ真面には構えたり、此者目科を見るよりも腰掛を離れて立ち「やア旦那ですか、多分入ッしゃるだろうと思ッて居ました何でもバチグノールの老人を殺した藻西とか云う罪人にお逢い成るのでしょうね目「爾だ、何か其藻西に変ッた事でも有るのか牢番「なに変た