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ちのもじ

血の文字

黒岩 涙香

「綾にしき」1892(明治25)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,021 字 · 87 页

青空文庫

苦しみを感じ右せんか左答えんかと独り胸の中に闘いて言葉には得出さぬ如く、空しく長きき声を洩すのみ、此有様抑も如何ように見て取る可きか、目科は隙さず突て入り「就て問度い事が有る、お前は殺すほどあの伯父が憎かッたのか藻「なアに少しも憎くは有ません目「では何故殺した藻「伯父の身代が欲いから殺しました、此頃は商買が不景気で日々苦しくなるばかりです、夫は同業に聞ても分ります、幸い伯父は金持ですけれど生て居る中は一文でも貸て呉れず、死さえすれば其身代が独で私しへ転がり込むと思いまして、目「分ッた/\、夫でお前は殺しても露見しまいと思ッたのか藻「はい爾思いました」あゝ目科は何故に斯も湿濃く問うなるや、余は必ず深き思惑の有る可しと疑い初めしに果せるかな彼れ忽ち語調を変じ「夫は爾としてお前あの、伯父を殺した短銃は何所で買た」余は藻西が何と答うるにやと殆ど気遣しさに堪えず手に汗を握れども藻西は驚きもせず怪みもせず「なに買たんじゃ有ません余程前から持て居たのです」と答う目「殺した後で其短銃を何うしたか藻「え、別に何うもしません、左様さ投捨て仕舞いました、外へ出てから目「では誰か拾た