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ちのもじ

血の文字

黒岩 涙香

「綾にしき」1892(明治25)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,021 字 · 87 页

青空文庫

者があろう、好し/\私が能く探させて見よう」読者よ目科は奥の奥まで探り詰ん為め故に斯る偽りの問を設けて、試みながらも其色を露現わさず相も変らぬ静かなる顔付なり、稍ありて又問掛け「一つ合点の行かぬ事は全体犬を連て行くと云う事は無いよ、あれが大変な露見の本に成た、あの様な者は内へ置て自分一人で行き相な者だッたのに」此問は何の意にて発せしや余は合点し得ざれども何故か藻西太郎は真実に打驚き「え、え、犬、犬を目「爾よ、プラトと云う黒犬をさ、店番が慥にプラトを認めたと云う事だ」此語を聞きて藻西太郎の驚きは殆ど譬うるに者も無し、彼れ驚きしか怒りしか歯を噛み拳を握りて立ち、何事をか言出さんとする如く唇屡々動きたるも漸くに我心を推鎮め「え、え」と悔しげなる声を発して其儘寝台に尻餠搗き「えゝ、是でさえ最う充分の苦みだのに此上、此上、何事も問うて下さるな、最う何う有ても返事しません」断乎として言放ち再び口を開かん様子も見えず、目科も此上問うの益なきを見て取りしか達て推問わんともせず、是にて藻西太郎を残し余と共に牢を出で、階を下りて再び鉄の門を抜け、廊下を潜り庭を過り、余も彼れも、無言の儘にて戸表へと立出しが余は茲に至りて我慢も仕切れず、目科の腕に手を掛けて問う「是で君は何と思う、え君、彼れ自分で殺したと白状し