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ちのもじ

血の文字

黒岩 涙香

「綾にしき」1892(明治25)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,021 字 · 87 页

青空文庫

可き時に非ず、目科は又真面目になり「いや内儀決して貴女を疑うのでは有ませんが唯吾々の心配するには若しや藻西太郎が犯罪の前に何か貴方に話した事は有る舞いかと思うのです、何か罪でも犯し相な事柄を倉「何うして其様な事が有りましょう、爾うお問なさるのは吾々夫婦を御存無いのです目「いやお待なさい、噂に聞けば此頃商売も思う様に行かず、随分困難して居たと云いますから若や夫等の話から自然彼の老人の事にでも移り――倉「はい如何にも商売の暇なのは真事ですが、幾等商売が暇だからとて目「いえ藻西太郎も自分一身の事では無し最愛の妻も有て見れば妻に不自由をさせるのが可哀相で、夫や是から何うかして一日も早く楽に成り度い財産を手に入れ度いと云う事情は有たに違い有ますまい倉「其様な事情が有たにせよ何で伯父などを殺しましょう、所天に罪の無い事は何所までも私しが受合ます」目科は徐ろに煙草を噛ぐ真似して「藻西太郎に罪が無いとすれば彼れが白状したのは何う云う訳でしょう、真実罪を犯さぬ者が爾う易々と白状する筈は有りますまい」今まで如何なる問に合ても澱み無く充分の返事を与えたる