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あめのやまぶき

雨の山吹

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,433 字 · 33 页

青空文庫

「動木に対しても、少し同情が足りなかったような気がする」兵庫はしまいに云った、「――あれも苦しかったんだということが、少しずつわかってくるようだ、汝生のばあいもそうだけれど、そんなにつきつめている気持を感づかなかったというのは、みなこっちが至らなかったからだと思う、……自分が非運になって、はじめて他人の苦しみがわかるというのは、たまらないことだな」

その言葉はつよく又三郎の頭に残った。

紅梅会からは梅園女史が三度来た。汝生と同行した四人はもちろん、他の塾生たちもしばしば来て、霊前で思い出ばなしをしては泣いた。ずいぶん好かれていたらしい、おもいやりのある情の篤いひとだったと、それぞれが例を挙げて語り、いかにも諦めきれないというようすだったが、もちろん病死について疑う者は一人もなかった。婚約者の西牧陽之助のほうも了解がつき、すべては無事におさまると思えたが、又三郎の気持は、日が経っていっても、この出来事からはなれられず、悲しいような、不安なような気分に、つきまとわれるのであった。

――しかし、汝生は本当に、結婚できないという理由だけで、死んだのだろうか、ほかにもっと隠れた意味があったのではないか。