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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
只羽織が真紫のお召であるので、いつかのとは違っているということが分かった。
「どうぞお掛けなさい。それとも寒いなら、お上がんなさいまし。お妹御さんが悪かったのですってね。もうお直りになったのですか」純一はお雪さんに物を言うとなると、これまで苦しいのを勉めて言うような感じがしてならなかったのであるが、きょうはなんだかその感じが薄らいだようである。全く無くなってしまいはしないが、薄らいだだけは確かなようである。
「よく御存じね。婆あやがお話ししたのでしょう。腎臓の方はどうせ急には直らないのだということですから、きのう退院して参りましたの。もう十日も前から婆あやにも安にも逢わないもんですから、わたくしはあなたがどっかへ越しておしまいなさりはしないかと思ってよ」こう云いながら、徐かに縁側に腰を掛けた。暫く来なかったので、少し遠慮をするらしく、いつかじゅうよりは行儀が好い。
「なぜそう思ったのです」
「なぜですか」と無意味に云ったが、暫くして「ただそう思ったの」と少しぞんざいに言い足した。
雲の絶間から、傾き掛かった日がさして、四目垣の向うの檜の影を縁の上に落していたのが、雲が動いたので消えてしまった。