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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
極めて平易に書いた、極めて浅薄な、廉価なる喝采を俗人の読者に求めているらしい。タヴォオテの、あの巻頭の短篇を読んで見れば、多少隔靴の憾はあるとしても、前後の文意で、ニヒト・ドホがまるで分からない筈は無い。それが分かっているとすれば、この語の説明に必然伴って来る具体的の例が、どんなものだということも分かっていなくてはならない。実際少しでも独逸が読めるとすれば、その位な事は分かっている筈である。それが分かっていて、なんの下心もなく、こんな質問をすることが出来る程、茂子さんは innocente なのだろうか。それでは、篁村翁にでも言わせれば、余りに「紫の矢絣過ぎている」それであの人のいつも作るような、殆ど暴露的な歌が作られようか。今の十六の娘にそんなのがあろうか。それともと考え掛けて、大村はそれから先きを考えることを憚ったと云うのである。
茂子さんはそれきり来なくなった。大村が云うには、二人は素と交互の好奇心から接近して見たのであるが、先方でもこっちでも、求むる所のものを得なかった。そこで恩もなく怨みもなく別れてしまった。勿論先方が近づいて来るにも遠ざかって行くにも、主動的にはなっていたが、こっちにも好奇心はあったから、あらわに動かなかった中に、迎合し誘導した責は免れないと、大村は笑いながら云った。