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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
目が醒めて見ると、四畳半の東窓の戸の隙から、オレンジ色の日が枕の処まで差し込んで、細かい塵が活溌に跳っている。枕元に置いて寝た時計を取って見れば、六時である。
純一は国にいるとき、学校へ御真影を拝みに行ったことを思い出した。そしてふいと青山の練兵場へ行って見ようかと思ったが、すぐに又自分で自分を打ち消した。兵隊の沢山並んで歩くのを見たってつまらないと思ったのである。
そのうち婆あさんが朝飯を運んで来たので、純一が食べていると、「お婆あさん」と、優しい声で呼ぶのが聞えた。純一の目は婆あさんの目と一しょに、その声の方角を辿って、南側の戸口の処から外へ、ダアリアの花のあたりまで行くと、この家を借りた日に見た少女の頭が、同じ処に見えている。リボンはやはりクリイム色で容赦なくいた大きい目は、純一が宮島へ詣ったとき見た鹿の目を思い出させた。純一は先の日にちらと見たばかりで、その後この娘の事を一度も思い出さずにいたが、今又ふいとその顔を見て、いつの間にか余程親しくなっているような心持がした。意識の閾の下を、この娘の影が往来していたのかも知れない。婆あさんはこう云った。