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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
と云うのは尤も無邪気なのである。「長々難有う」と云って一旦出して置いて、改めてプラス幾らかの要求をするというのは古い手である。それから一番振っているのは、「もうこれだけで丁度になりますからどうぞ」というのであった。端たのないようにする物、纏めて置く物に事を闕いて、借金を纏めて置かないでも好さそうなものである。己はそういう経験を繰り返したくなかった。そこで断然初めからことわることにした。然るにそのことわるということの経験は甚だ乏しい。己だって国から送って貰うだけの金を何々に遣うという予算を立てているから、不用な金はない。しかしその予算を狂わせれば、貸されない事はない。かれの要求するだけの金は現に持っているのである。それを無いと云おうか。そんな嘘は衝きたくない。又嘘を衝いたって、それが嘘だということは、先方へはっきり知れている。それは不愉快である。
つい国を立つすぐ前である。やはりこんな風に心中でとつ置いつした結果、「君これは返さなくても好いが、僕はこれきり出さないよ」と云った事があった。そしてその友達とはそれきり絶交の姿になった。実につまらない潔癖であったのだ。