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たかしまいし

高島異誌

国枝 史郎

「講談雑誌」1924(大正13)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,007 字 · 26 页

青空文庫

婢僕多く家に充ち、衆人を従へて遊燕すれば、昔日彼の貧を嫌つて、接近を忌みたる一門親族も後に来つて媚を呈す。云々……(下略)」

要するに、彼は一朝にして、王侯の生活に達したのであった。で成金の常として幾人もの妾を蓄えたが、笹千代という二十歳の美婦を専ら彼は寵愛した。

斯うして彼の好運は、先拡りに益々拡り、容易に崩れそうにも見えなかった。併し老医師千斎ばかりは、あの時以来足踏みをせず、純八の噂の出る毎に、

「いやいや誠の栄華ではござらぬ。魑魅魍魎の妖術でござるよ」

斯う苦々しそうに云い放し、彼の運命を気遣うのであった。幼馴染の筒井松太郎は、以前に変らぬ友情を以って絶えず彼の許を訪れたが、是も時々小首を傾げ、

「ハテ、此素晴らしい好運は、一体何時まで続くのであろう?」と、不安そうに呟く事があった。

斯うして一年は経過ったが、其時大きな喜が復も純八に訪れて来た。それは笹千代が男の子を儲けたことで、早速吉丸と名を付けて、宝の様に慈愛んだ。美しい女、不足無い衣食、そうして子さえ出来たので、心ゆくまでの大栄華に、彼は浸ることが出来たのである。

彼の館の庭園に古い広い池があった。