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くろとかげ

黒蜥蜴

江戸川 乱歩

「日の出 第三巻第一号―第十二号」1934(昭和9)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,633 字 · 215 页

青空文庫

長椅子の方も、酔漢の方も……ではまた後ほど」

ガチャリと受話器の音。明智はガッカリしたように、そこにうずくまってしまった。一座の人々は異常な緊張で電話の声に聞き入っていた。そして、一句ごとに、この名探偵の突飛な行動の理由がわかって行くように思われた。

「明智さん、お話しの様子で、大体わしにも事の次第がわかりました。わしはあんたの御明察に驚き入りました。いや、それにもまして、賊のこの思いきった、ズバぬけた手品には、あいた口がふさがりませんよ。つまり、あの酔っぱらいをよそおった男が、仕かけをした長椅子の内部にかくれて、どっかで家具屋の作った本物とすりかえたのですね。そして、応接間には、人間のはいった長椅子がすえてあったというわけですね。そこへ早苗がはいって行く……男が椅子の中からソッと抜け出して娘を……明智さん、あいつはまさか娘を殺したのでは……」

岩瀬氏は、ギョッとして言葉を切った。

「いや、決して殺すようなことはありません。Kホテルの場合でもわかっている通り、あいつは生きたお嬢さんをほしがっているのです。」

明智が安心させるように答える。

「ウン、わしもそうとは思いますがね……それから、正気を失った娘を、今まで自分のひそんでいた長椅子の内部のうつろの中へ入れて、蓋をしめる。