轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くろとかげ
黒蜥蜴
江戸川 乱歩
「日の出 第三巻第一号―第十二号」1934(昭和9)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,633 字 · 215 页
はまだ安心ができなかった。
相手には明智小五郎といういやなやつがついているのだ。あいつが、どんな智恵をしぼり、どんな恐ろしいことをたくらんでいるか、知れたものではない。
彼女は双眼鏡を眼に当てて、欄干から塔の下のおびただしい群衆を入念に眺め廻した。挙動の不審なやつはいないかと、熱心に調査した。そうして眼まぐるしく動く群衆を眺めているうちに、われとわが心の弱みに負けて、彼女は言い知れぬ不安になやまされはじめた。
あすこに塔を見上げてたたずんでいる洋服の男が刑事かもしれない。こちらに、さいぜんからじっとうずくまっているルンペンが、なんだか怪しい。明智の部下が変装しているのかもしれない。
いやいや、このおびただしい群衆の中には、明智小五郎その人が、何かに姿を変えて、まぎれこんでいまいものでもない。
彼女はイライラしながら、双眼鏡を眼に当てたまま、展望台の周辺を、何度となく歩き廻った。
捕縛を恐れることは少しもない。そんなことをすれば、大切な早苗さんの命がなくなることは、敵の方でも知り抜いているはずだ。恐ろしいのは尾行であった。尾行の名人にかかっては、いくら機敏に立ち廻っても、まき切れるものではない。