轻松读懂日语经典作品
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くろとかげ
黒蜥蜴
江戸川 乱歩
「日の出 第三巻第一号―第十二号」1934(昭和9)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,633 字 · 215 页
いかにも彼らは奇妙な駆落者の姿であった。男は耳がわるいのか、頭から顎にかけて、グルグルと繃帯を巻き、その上からきたならしい鳥打帽をかぶり、木綿縞の着物の上に黒らしゃの上っ張りを着て、皮のバンドを締め、素足に板裏草履といういでたち。女は前にしるした通りの女房姿。両人とも、不意気なマスクをかけている。その男が女の手を引いて、人眼を忍ぶように、木立ちから木立ちをぬって、チョコチョコと小走りに道を急いでいたのだ。
「へへへへへ、どうもすみません」
男は気がついて、にぎっていた女の手をはなすと、少しはにかみながら笑った。
「そんなこと、よござんすわ……あなた、どうかなさいましたの、その繃帯?」
「黒トカゲ」は危地を脱し得たお礼心に、そんなことをたずねてみた。
「ええ、中耳炎をやってしまいましてね。もう大分いいのですけれど」
「まあ、中耳炎なの。大切にしなければいけませんわ。でも、あなたいいおかみさんを持ってお仕合わせですわね。ああして二人で商売をしていたら、さぞ楽しみなことでしょうね」
「ヘヘヘヘヘ、なあにね、あんなやつ、しようがありませんや」
この男少し甘いんだなと、おかしくなった。