轻松读懂日语经典作品
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くろとかげ
黒蜥蜴
江戸川 乱歩
「日の出 第三巻第一号―第十二号」1934(昭和9)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,633 字 · 215 页
「ウン、ほんとうに、あの小さな虫が、生きて動きだすんだからね」
意気なタキシードの青年がささやき交わした。
美しい女の左の腕に、一匹の真黒に見えるトカゲが這っていた。それが彼女の腕のゆらぎにつれて、吸盤のある足をヨタヨタと動かして、這い出したように見えるのだ。今にもそれが、肩から頸、頸から顎、そして彼女の真赤なヌメヌメとした、唇までも、這いあがって行きそうに見えながら、いつまでも同じ腕にうごめいている。真にせまった一匹のトカゲの入墨であった。
さすがにこの恥知らずの舞踊は四、五分しかつづかなかったが、それが終ると、感激した酔いどれ紳士たちが、ドッと押し寄せて、何か口々に激情の叫びをあげながら、いきなり裸美人を胴上げにして、お御輿のかけ声勇ましく、室内をグルグルと廻り歩いた。
「寒いわ、寒いわ、早くバス・ルームへつれて行って」
御託宣のまにまに、御輿は廊下へ出て、用意されたバス・ルームへと練って行った。
暗黒街のクリスマス・イヴは、この婦人の宝石踊りを最後の打ちどめにして、人々はそれぞれの相手と、ホテルへ、自宅へ、三々五々帰り去った。
お祭りさわぎのあとの広間には、五色の粉紙とテープとが、船の出たあとの波止場のように、きたならしく散りしいて、まだ浮力を残した風船玉が、ちらほらと、天井を這っているのも物さびしかっ