轻松读懂日语经典作品
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くろとかげ
黒蜥蜴
江戸川 乱歩
「日の出 第三巻第一号―第十二号」1934(昭和9)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,633 字 · 215 页
早苗さんに化けた緑川夫人が、ドアをしめながらささやくと、中から太い男の声が、
「ええ、大丈夫です」
と答えた。潤ちゃんの山川健作氏だ。
夫人は何かしらかさばった風呂敷包みを小脇にかかえている。彼女はそれをかかえたまま人眼をさけながら、階段をのぼった。岩瀬氏の部屋へたどりつき、ソッとのぞいてみると、予期した通り岩瀬氏はまだ帰っていない。彼は階下の広間で明智小五郎と話しこんでいたのだ。
そこはソファや肘掛椅子や書きもの机などをならべた居間と、寝室と、バス・ルームの三部屋つづきになっていたが、夫人はその居間にはいると、書きもの机の引出しをあけて、岩瀬氏常用のカルモチンの小箱を取り出し、中の錠剤を抜き取って、用意してきた別の錠剤とすりかえて、元通り引出しにおさめた。
それから、次の間の寝室にはいり、壁の明かるい電燈を消して、小さなスタンドだけにしたうえで、ボーイ室へのベルを押した。
間もなくノックの音がして、一人のボーイが居間の方へはいってきた。
「お呼びでございましたか」
「ええ、あの、下の広間にお父さまがいらっしゃるからね。もうおやすみになりませんかって、呼んでくださいませんか」