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さんごくし
三国志
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 頁
と、曹操は、ほれぼれと見送っていたが、つき従う李典、于禁、許などは、口を極めて、怒りながら、
「なんたる傲慢」
「恩賜の袍を刀のさきで受けるとは」
「丞相のご恩につけあがって、すきな真似をしちらしておる」
「今だっ。――あれあれ、まだ彼方に姿は見える。追いかけて! ……」
と、あわや駒首をそろえて、馳けだそうとした。
曹操は、一同をなだめて、
「むりもない事だ。関羽の身になってみれば、――いかに武装はしていなくとも、こちらはわが麾下の錚々たる者のみ二十人もいるのに、彼は単騎、ただひとりではないか。あれくらいな要心はゆるしてやるべきである」
そしてすぐ許都へ帰って行ったが、その途々も左右の諸大将にむかって、
「敵たると味方たるとをとわず、武人の薫しい心操に接するほど、予は、楽しいことはない。その一瞬は、天地も人間も、すべてこの世が美しいものに満ちているような心地がするのだ。――そういう一箇の人格が他を薫化することは、後世千年、二千年にも及ぶであろう。其方たちも、この世でよき人物に会ったことを徳として、彼の心根に見ならい、おのおの末代にいたるまで芳き名をのこせよ」