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さんごくし

三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 頁

青空文庫

五

見ると今、そこを渡ってくる驢馬の上に、暖かそうな頭巾をかぶった老翁のすがたがある。身には狐の皮衣をまとい、酒をいれた葫蘆を、お供の童子に持たせてくる。

籬の角から渓へのぞんで、寒梅の一枝が開きかけていた。

老翁はそれを仰ぐと、興をもよおしたらしく、声を発して、梁父の詩を吟じた。

一夜北風寒し

万里雲厚く

長空雪は乱れ飄る

改め尽す山川の旧きを

白髪の老衰翁

盛んに皇天の祐を感ず

驢に乗って小橋を過ぎ

独り梅花の痩せを嘆ず

玄徳は、詩声を聞いて、その高雅その志操を察し、かならずこの人こそ、孔明であろうと、橋畔に馬を捨てて、

「待つこと久し。先生、ただ今、お帰りでしたか」と、呼びかけた。

老翁は、びっくりした容子で、すぐさま馬をおり、礼をかえして、

「てまえは、臥龍の岳父の黄承彦というものじゃが……して、あなた様は?」と、怪訝った。

またしても、人違いだったのである。孔明の妻、黄氏の父だった。玄徳は、卒爾を謝して、

「そうでしたか。私は新野の玄徳ですが、臥龍の廬を訪うこと二回、今日もむなしく会えずに帰るところです。いったい、あなたの賢婿さんは何処へ行ったのでしょう?」

「さあ。