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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
自身番の前は、まだ、人だかりであった。深雪は、本当とも、嘘とも判らぬ話を、妙な男から聞いているよりも、早く、兄のことを確めたかった。
「お嬢さん、お供いたしまして、お兄さんの前で、申しましょう」
庄吉は、こういいながら、じっと、深雪の頬、襟足を眺めて、ついて行った。
辻番所の前には、まだ人が集まっていた。傘と、傘とが重なり合って、入口も、屋根も見えなかった。
「ちょいと御免なさい――お前さん、ちょいと、肩を片づけてくんな」
庄吉は、右手を懐に、頭から雨に濡れながら、群集を、左手で、肩で、言葉で押し分けて入って行った。
「やいっ、肩を押しゃがって、何んだ」
「お嬢さんのお供だ、おっかない顔をしなさんな」
庄吉の後方に、傘をすぼめて、顔を隠した深雪がついていた。人垣を抜けると、番所の入口に、仲間が一人、番人が一人、腰かけていた。薄暗い中の方に、四五人の士姿が見えた。庄吉が
「今日は」
番人は庄吉への挨拶をしないで、その後方に佇んだ深雪を、怪訝そうにじっと眺めた。
「まだ、お調べ中かい」
「うん」
「何んだか、大勢、見えてるじゃないか」
「三田の御屋敷から、今見えたのだ」