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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
萌出る物
三人の士分の者が、五人の足軽に、その周囲を、警戒させて、少し離れたところで雑談していた。
「もう、腐っているかな」
「暖かいから、判らんぞ」
「然し――老公も、御立腹は、尤もながら、別に、死体を掘り出して、又、獄門にしなくても、よかりそうなものではないか」
「余程、御立腹と見えるのう」
「お為派も、悪いには、悪いが――然し、このことが、江戸へ聞えたなら、老公は、いよいよ隠居だのう」
「それは、決まっているらしいが――もし、斉彬公の世になったなら、この仕返しが、きっと、来るであろう」
人夫は、時々泥まみれの手で、汗を拭いては、土を掻き分けて行った。埋めて、大して日の経たぬ土は、湿っていたし、柔かくもあった。鋤が棺に当ったらしく、堅い手答えがした。
「旦那様、誰方か、一寸、手をかして頂けませんで、ござりましょうか」
恐る恐る聞いた。
「何うした」
「持ち上げるんで――」
「人間一疋を持ち上げるのに、二人がかりで出来ん法があるか」
「へえ」
「二人でやれっ。やらんと、賃銀を、与えんぞ」
「へえ」
人夫は、棺の周囲の土へ、鍬を打込んで行った。鍬の先が、棺の木に当って、土に汚れて、薄黒くなった肌に、白い傷が、いくつも、ついた。