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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

第一の蹉跌

第一の蹉跌

丸木のままの柱、蜘蛛の巣のかかった、煤まみれの低い天井、赭っ茶けた襖――そういう一部屋が、崖に臨んだところに、奥座敷として、建てられてあった。その大きい切窓から、向うの峰、下の谷が眺められて、いい景色であったが、仁十郎が、疲労によろめいて、どかりと腰を降ろすと、座敷中がゆらめいたくらいに危くもあった。

茶店の爺が、早朝からの客を、奥へ通して、軒下に立てかけてある腰掛を並べて、店ごしらえをしていた。婆は、土間の、真暗な中で、竈の下を吹きながら、皺だらけの顔だけを、焔のあかりに浮き上らせていた。

「霧島、韓国、栗野――」

玄白斎は、眼を閉じて、髯をしごきながら、呟いた。仁十郎が

「間根ヶ平で、七ヶ所――牧殿のお力なら、調伏は、成就致しましょうな」

玄白斎は、暫くしてから

「是非も無い」

それも、元気の無い、低い声であった。

「婆あ――粥は未だ出来んか」

市助が、土間へ、声をかけた。

「はい、只今、すぐ、煮えますから――」

三人が、牧を追って、牧の修法している山々を調べてから、もう二十日近くなっていた。日数の経った修法の跡から、だんだん、追いつめて、昨日、修法をした跡だと、判断できたのが、栗野山の頂上であった。