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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

深雪は、一心に、中の方を見て、兄の姿、兄の声を知ろうとしていたが、今の番人の言葉を聞くと、胸をどきんとさせて、その顔をちらっと見た。番人は、庄吉の蔭になっている深雪の顔へ、顎をしゃくって

「何んだえ」

と、庄吉に囁いた。

「あの士の妹さんさ。ちょっと、逢いてえが、いいかい」

「願ってみな」

庄吉は、土間を、中戸の方へ行って、小腰をかがめて

「御免なさいまし」

一人が、振り向いたが、じろっと庄吉を見たまま、黙って、元の方へ顔をやった。庄吉は

(こん畜生っ、何を、威張ってやがる)

と、憤りながら

「一寸、お願い申しやす」

「何んだ、貴様は――」

又、その侍が振向いて、睨んだ。そして、深雪が、群集の前に、浮絵のような鮮かさで立っているのに気がつくと、じっと、その顔へ、見入ってしまった。庄吉は、心の中で

(この甘酒野郎。女の顔を見て、とろとろにとけてやあがる)

と、冷笑しながら

「ただ今のお侍衆へ、あの、お妹さんが、一寸お目にかかりたいと――」

「あれが、妹か」

そういった時、中の三人の侍も、深雪に気がついて、入口へ眼をやった。深雪は、それに気がついて、俯向いてしまった。