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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
「そこな女中、この美少年が、お主に惚れて、今夜、泊るとよう」
「ああれ、また、ばっかり――」
八郎太が、苦笑して
「益満」
「あははは、では、拙者は、これにて――小太、上方で、逢おう」
「うむ」
「どうれ、雨の夜、でも踊るか」
と、いって、益満は、裾を端折った。
「途中、気をつけて」
「闇試合は、女中と、小太に任せよう」
「あれ又、あんなことを――」
と、女中は、益満を睨んで、すぐ、その眼で、小太郎に媚を送った。
七瀬等三人は、秋雨の夜道を、徹宵で歩いて行った。品川の旅宿の人々は、この雨の中を、この時刻から、西へ行く女連れの三人に、不審さを感じながら――それでも
「お泊りじゃござんせんか」
と、声だけはかけた。軒下づたいに妓楼を素見して歩いている人々は、綱手をのぞいて
「よう、別嬪」
と、叫んだ。三人は、この闇の雨の道を歩きたくはなかったが、江戸近くで泊るということは、夫に対して出来なかった。夫に対し、父に対し、主人に対し、自分達も、その人と同じように苦労をしなくてはならぬように感じていた。そして、身体を冷やしつつ、歩いた。
それでも、鈴ヶ森へかかって、海の鳴る音、波の打上げて来る響き、松に咽びなく風と、雨の音を聞き、仕置場の番小屋の灯が、微かに洩れているのを見た時には、流石に気味悪くなって