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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

照準を直した時、駕は、侍女の蔭を通って、もう、半分以上も、家の中へ入ってしまっていた。

(こっちに備えがあれば、敵も用心するものだ――流石に、お由羅だ)

益満は、微笑して立上った。そして、瓦をことこと鳴らしつつ、二階の窓から、入って来て

「ちんとち、ちんちん、とちちんちん、ちんちん鴨とは、どでごんす――」

と、唄いながら、段を下りた。富士春が

「騒々しいね」

「ちんちんもがもがどでごんす」

益満は、片足で、三段目から、飛び降りて、そのまま、ぴょんぴょん、富士春の側へ行こうとすると、火鉢の前に一人の男が坐っていた。

そして、その男も、富士春も、二人ながら気拙そうに、沈黙してしまった。益満は

(庄吉だな)

と、思った。そして、二人を気拙くさせたのは、自分だと感じた。その途端、富士春が

「ねえ、益満さん、あの、貴下とこのお嬢という人は、この人の手を折った人の、妹さんで、ござんしょう」

益満は、庄吉に

「初めて――でもないが、手前は、益休と申して、ぐうたら侍」

庄吉は、周章てて、座蒲団から滑って

「恐れ入ります、お名前は、それから、以前此奴が、お世話になりましたそうで、いろいろと――」