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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

調所は、思い出して、声を立てて笑った。

「良介、西の宮へ泊ったことを憶えているか」

「いや、あの時には――」

二人は、声を合せて笑った。往来を走る人がだんだん多くなってきた。けたたましい叫びと、車の音がした。

斉興は、借金取のために、大阪に泊れなかったので、西の宮へ宿をとると、大阪町人が一度に押しかけて来て借金の催促をした時の、可笑しさを思い出したのであった。

その当時は、駕人足さえ雇えなかったので、使は、誰でも歩いた。道中人夫は、薩摩と聞くと対手にしないで、士分の人が、荷物を担いだ。邸の修繕は玄関までで、庭には草が延びていて、士が刈って馬にやっていた。

そういう十年余り前のことを思うと――今は、何うだろう。芝、高輪、桜田、西向、南向、田町、堀端の諸邸の壁の白さ、こうして坐っている大阪上、中、下邸の新築、日光宿坊、上野宿坊を初め、京の錦小路の邸の修復、三都には、斉興御来邸厳封の金蔵に、百万両ずつの軍用金の積立さえできた。

調所は、こう考えてきた時、はっとした。斉彬の世になったなら?

(未だ仕事が残っている。琉球方用船の新造、火薬の貯蓄、台場の築造、道路、河川の修繕――)