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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

足は、もう動かなかった。

「父上っ――御免」

小太郎は、走りながら絶叫した。だが、八郎太には聞えぬらしく、微笑もしなかった。二人の浪人が、八郎太の前へ立った時、牧が

「その老人を斬るなっ」

と、叫んだ。そして、足早に、ずかずかと近寄ると、八郎太の右脇下へ、自分の肩を入れて

「仙波っ、気を確かに」

と、叫んだ。八郎太は、眼をしばたたいたきりで、自分を扶けてくれているのは誰だか、判らなかった。だが、微かに

「小太郎は?」

と、聞いた。

「無事じゃ。無事に逃げたぞ。眼が見えるか」

八郎太が、頷いた。そして、右手で、前方を探るようにした。牧は、自分の後方の斎木に

「肩を貸せ、左の方を、持ち上げて、その小高いところまで運ぶのじゃ」

と、牧は、斎木と共に八郎太の左右から、身体を持ち上げて、急ぎ足に、小太郎の逃げて行く方へ歩んで行った。

「先生っ」

「如何、なされます」

貴島が、牧の態度に不審を抱いて聞いた。

「武士の情じゃ」

牧は、ただ、僅かに残った、精神力だけで、微かな命を、つなぎ止めている八郎太を肩にかけて、草原のなだらかなところを、少し登った。そこには、将門岩が、その外の岩が、うずくまっていた。