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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

一人の肥った侍女は、すぐ隣りのおとなしい梅園の手を引っ張った。一人が

「それよりも、あの新参者は?」

「そうそう、あの器量好しを、いじめましょうわいな」

深雪は、そういう会話に、耳を背向けて、明日の自分、あの老女梅野の言葉、お由羅のやさしさ、それを刺せという命令、父、兄、母――そうしたことを、毀れた鏡に写してみているように、途切れ途切れに、ちらちら考えていた。そのうちに自分の名が出たので、それに、注意すると

「深雪さん」

と、間近くで、暗い中で、誰かが呼んでいた。そして、他の人々は、深雪が、真赤になって、憤りたくなるような、自分に関した猥らな話をして、きゃっきゃっ笑っていた。

昼間の、つつましく、美しい女姿が、こうした闇に見えなくなると、その女達を包んでいた、押えていた醜悪なものだけが、露骨すぎて現れてきた。深雪は、寝間着の裾を結んで、蒲団を押えて、もし、手でも出したなら、容赦すまいと、呼吸をこらしていた。

想像していた、礼儀の正しい、奥生活の昼は、想像以上に――苛酷なくらいに、厳粛であったが、侍女部屋の夜は、又、深雪の想像以上に乱れていた――と、いうよりも、深雪には考えられない愛欲の世界であった。