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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

物音はしたが、又、そのまま、静まり返ってしまった。

「誰方か、おられませぬか」

百城は、こういいながら、縁側と、急傾斜な土手との間の、狭いところを、堂の後方へ廻りかけた。微かな人の呼吸らしいものが聞えた。

「お頼み申す」

百城が、立止まった。綱手は、きっと、兄の呻きだと、思った。その時、ばさっと、葉にすれる音が、堂の真上の木立の中でした。二人が、見上げると、老僧が、枝から、枝へ手をかけながら、猿のように、急傾斜な山の茂みの中を降りて来た。

(これが、義観だ)

と、二人は思った。

老僧は、道の無い山に、道が有るらしく、少しも、躊躇しないで、杉の幹に手を当て、灌木の枝を掴み、大きく飛び降り、滑り降りして、忽ちの内に、堂の後方へ消えてしまった。百城が、歩きかけると、僧は、部屋へ入って来たらしく、足音がした。

「お頼み申しまする」

障子の中から

「誰方じゃ? 御用は?」

「当所において、御介抱にあずかっておりまする者の妹、並びに、付添に参った百城月丸と申す者――お眼にかかれましょうなら」

「ああ、さようか、お上りなされ」

「勝手元は? 足が汚れておりまするが」

「そのまま」